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削ったのは、主張。足したのは、時間。

削ったのは、主張。足したのは、時間。

Posted on 3月 2, 2026


職人の朝

 

最近、通勤のお供にハマっているYouTubeがあります。

「通勤タイムズ」の“伝説の朝ごはん”。

こんにちは、ゆやのです♪

「へえ、この人が自分でこんな朝ごはんを作るんだな。」

そう思うような、飾らない一皿。

でも、包丁を握る手つきには迷いがなく、湯気の向こうに積み重ねた時間が見える。

あたたかなドラマを感じる…。

完成しているのは料理そのものではなく、その人が重ねてきた人生という時間なのだと思うのです。

 

欲しいと思えなかった理由

 

店主の国内での移動や宿泊は、ほとんどが愛車のゴードンミラー。

撮影も、イベントも、北から南までの遠い出張も。
その多くを車とともに過ごします。


白いボディに木目の内装。
必要なものだけが整然と収まった空間。
無駄を削ぎ落とした、静かな実用主義。


そんな車のルーフラックに、、、

大きな丸い焚き火台が“デデン”と主張強めに乗っかっていました。過去のインスタ投稿の写真にも何度か登場しています。
正直、少し浮いて見えた(笑)

 

理由はいくつか聞いた覚えがあります。でも強く残っているのは、この言葉です。

「今、市場で買える焚き火台で、欲しいと思えるものにまだ出会えていない。」


形は悪くない。
機能も足りている。

正直、もういいものは出尽くしている。


でも、“持ちたい”と思えない。

使えればいい、では何か足りない。
10年後も横に置いておきたいか。


そこが基準でした。 


偶然の出会い

 

この焚き火台の物語は、偶然から始まります。

北海道で、カルマストア監修の小屋づくりのために
@camplabo.ink さんを訪れていた店主。

同じタイミングで、別の仕事のために現地を訪れていた@waver_kraftさん。

まったく別の目的でそこにいた二人が、たまたま同じ場所に居合わせました。

それまで焚き火台に強い関心を示していなかった店主が、珍しく前のめりになっていた。

買い付けなどもそうですが、出会いへの直感の早い人だなといつも思います。


“作るかどうか”ではなく、

“誰となら作れるか”。


あの時間があったからこそ、この焚き火台は始まりました。


錆びることで守る

 

ここで、少しだけ素材の話を。
今回の焚き火台に使用するコールテン鋼。

 

建築や橋梁などにも使われる鋼材で、最大の特徴は「錆びることで自らを守る」という性質です。


通常の鉄は錆び続け、やがて朽ちていきます。

けれどコールテン鋼は違う。


表面にできた錆(酸化被膜)が緻密な保護膜となり、それ以上の腐食を防ぐ。


錆びる。

でも、それ以上進まない。


鉄という素材の欠点に見える現象を、強さに変えてしまう素材です。


たとえば、
バークレイズ・センター。

NBAブルックリン・ネッツの本拠地として知られるこの建築は、
外装の大部分にコールテン鋼が使われています。


都市のど真ん中で、あえて“錆びた表情”を見せる。


ピカピカではなく、時間を纏った建築。

巨大なスタジアムでさえ、完成形は“経年変化の途中”にあります。


新品が完成ではない。
時間とともに完成へ向かう素材。だからこそ、その素材を理解して扱う人を選ぶ。

大量生産にはできない、人の思いに馳せるものづくりのできる人でなくてはならない。

 

主張を削ぐ

 

「一番悩んだのは、デザインでした。」

職人さんとお話をする機会をいただき、いくつか質問をさせていただきました。

「世の中に出ているトレンドの焚き火台は、本体に抜きを入れて、抜けたところから火の揺らぎが見えるようになっていますよね。」


確かにそうです。
炎が揺れる様子を見せるためのレーザー加工での大きな抜き。


「当初はロゴの抜きを入れてみたりもしました。けれどロゴの主張はさせたくない。だから小さくしてみたり。でも小さ過ぎて抜くことができなかったりして。」


試行錯誤が続いたそうです。


「カルマさんらしさを出すのに、あえてロゴを抜かないで、コールテン鋼の錆で“らしさ”を出す案にたどり着くまで、少し時間がかかりました。」


ロゴで語るのではなく、素材で語る。


「削った部分は、あえてロゴを抜かず、主張し過ぎないことです。」

そして、

「足した部分は、コールテン鋼を使ったことですね。経年変化があって、しかもユーザーによって変わり方が違う。だから“自分だけの焚き火台”になる。所有感も、それぞれが思う価値も変わっていくと思います。」

 

削ったのは、派手さ。足したのは、時間。

コールテン鋼という素材を選んだことで、この焚き火台は“時間を感じる道具”になりました。

その選択に、カルマストアらしさが宿っています。


手を離れて、完成する

 

「同じ所有者が、10年後も錆を愛でていてくれたら嬉しいですね。親から子へ受け継がれていくのもいいですね。」

職人さんからその言葉を聞いたとき、
この焚き火台はもう“商品”ではないのだと思いました。

物売りの手を離れ、
作り手の手をも離れ、
持ち主の元でこの焚き火台を囲んだ時間、思い出。

焚き火台に主張も派手さもないけれど、

流れた時間そのものが、美しい錆として残り初めて完成する。


派手ではない。

でも確かに、時間が積み重なっていく。

カルマストアが選ぶのは、流行ではなく時間です。この焚き火台が、選んでくださった方の思い出の延長線上にありますように。

 

 

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