削ったのは、主張。足したのは、時間。
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職人の朝
最近、通勤のお供にハマっているYouTubeがあります。
「通勤タイムズ」の“伝説の朝ごはん”。
こんにちは、ゆやのです♪
「へえ、この人が自分でこんな朝ごはんを作るんだな。」
そう思うような、飾らない一皿。
でも、包丁を握る手つきには迷いがなく、湯気の向こうに積み重ねた時間が見える。
あたたかなドラマを感じる…。
完成しているのは料理そのものではなく、その人が重ねてきた人生という時間なのだと思うのです。
欲しいと思えなかった理由
店主の国内での移動や宿泊は、ほとんどが愛車のゴードンミラー。
撮影も、イベントも、北から南までの遠い出張も。
その多くを車とともに過ごします。
白いボディに木目の内装。
必要なものだけが整然と収まった空間。
無駄を削ぎ落とした、静かな実用主義。
そんな車のルーフラックに、、、
大きな丸い焚き火台が“デデン”と主張強めに乗っかっていました。過去のインスタ投稿の写真にも何度か登場しています。
正直、少し浮いて見えた(笑)
理由はいくつか聞いた覚えがあります。でも強く残っているのは、この言葉です。
「今、市場で買える焚き火台で、欲しいと思えるものにまだ出会えていない。」
形は悪くない。
機能も足りている。
正直、もういいものは出尽くしている。
でも、“持ちたい”と思えない。
使えればいい、では何か足りない。
10年後も横に置いておきたいか。
そこが基準でした。
偶然の出会い
この焚き火台の物語は、偶然から始まります。
北海道で、カルマストア監修の小屋づくりのために
@camplabo.ink さんを訪れていた店主。
同じタイミングで、別の仕事のために現地を訪れていた@waver_kraftさん。
まったく別の目的でそこにいた二人が、たまたま同じ場所に居合わせました。
それまで焚き火台に強い関心を示していなかった店主が、珍しく前のめりになっていた。
買い付けなどもそうですが、出会いへの直感の早い人だなといつも思います。
“作るかどうか”ではなく、
“誰となら作れるか”。
あの時間があったからこそ、この焚き火台は始まりました。

錆びることで守る
ここで、少しだけ素材の話を。
今回の焚き火台に使用するコールテン鋼。
建築や橋梁などにも使われる鋼材で、最大の特徴は「錆びることで自らを守る」という性質です。

通常の鉄は錆び続け、やがて朽ちていきます。
けれどコールテン鋼は違う。
表面にできた錆(酸化被膜)が緻密な保護膜となり、それ以上の腐食を防ぐ。
錆びる。
でも、それ以上進まない。
鉄という素材の欠点に見える現象を、強さに変えてしまう素材です。
たとえば、
バークレイズ・センター。


NBAブルックリン・ネッツの本拠地として知られるこの建築は、
外装の大部分にコールテン鋼が使われています。
都市のど真ん中で、あえて“錆びた表情”を見せる。
ピカピカではなく、時間を纏った建築。
巨大なスタジアムでさえ、完成形は“経年変化の途中”にあります。
新品が完成ではない。
時間とともに完成へ向かう素材。だからこそ、その素材を理解して扱う人を選ぶ。
大量生産にはできない、人の思いに馳せるものづくりのできる人でなくてはならない。
主張を削ぐ
「一番悩んだのは、デザインでした。」
職人さんとお話をする機会をいただき、いくつか質問をさせていただきました。
「世の中に出ているトレンドの焚き火台は、本体に抜きを入れて、抜けたところから火の揺らぎが見えるようになっていますよね。」
確かにそうです。
炎が揺れる様子を見せるためのレーザー加工での大きな抜き。
「当初はロゴの抜きを入れてみたりもしました。けれどロゴの主張はさせたくない。だから小さくしてみたり。でも小さ過ぎて抜くことができなかったりして。」
試行錯誤が続いたそうです。
「カルマさんらしさを出すのに、あえてロゴを抜かないで、コールテン鋼の錆で“らしさ”を出す案にたどり着くまで、少し時間がかかりました。」
ロゴで語るのではなく、素材で語る。

「削った部分は、あえてロゴを抜かず、主張し過ぎないことです。」
そして、
「足した部分は、コールテン鋼を使ったことですね。経年変化があって、しかもユーザーによって変わり方が違う。だから“自分だけの焚き火台”になる。所有感も、それぞれが思う価値も変わっていくと思います。」
削ったのは、派手さ。足したのは、時間。
コールテン鋼という素材を選んだことで、この焚き火台は“時間を感じる道具”になりました。
その選択に、カルマストアらしさが宿っています。
手を離れて、完成する
「同じ所有者が、10年後も錆を愛でていてくれたら嬉しいですね。親から子へ受け継がれていくのもいいですね。」
職人さんからその言葉を聞いたとき、
この焚き火台はもう“商品”ではないのだと思いました。
物売りの手を離れ、
作り手の手をも離れ、
持ち主の元でこの焚き火台を囲んだ時間、思い出。
焚き火台に主張も派手さもないけれど、
流れた時間そのものが、美しい錆として残り初めて完成する。

派手ではない。
でも確かに、時間が積み重なっていく。
カルマストアが選ぶのは、流行ではなく時間です。この焚き火台が、選んでくださった方の思い出の延長線上にありますように。