はじまりはセーラーパンツ。
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こんにちは、ゆやのです♪
先日、九重へ朝駆けに行ってきました。
朝駆けとは、まだ夜が明けないうちから山を登り、山頂や稜線で日の出を迎える登山のこと。
今回の出発は、真夜中の午前2時半。
台風が近づく前の空は厚い雲に覆われ、星さえも見えない夜でした。
ヘッドライトの明かりだけを頼りに、真っ暗な山道を歩いていきます。
そこで、ひとつ不思議なことに気がつきました。
星も見えないほど曇った空は、ぼんやりと青白く見えるのに、森の中はそれよりも驚くほど黒いんです。

同じ暗闇の中にいるはずなのに、木々が生い茂る場所だけは、光をすべて吸い込んでしまったかのような漆黒の世界。
そんな森の中を歩いていると、ふいに暗闇の向こうに光るものが見えました。
二つの目。
ヘッドライトの光を反射して、獣の目だけが闇夜に浮かんでいました。
ゾワゾワ、ザワザワ。
身体はちゃんと怖がっているのに、頭の中は意外なほど冷静で。
「あれはきっと鹿だろうな」
そんなことを考えながら、私はある絵本の挿絵を思い出していました。
いつ、どこで読んだのかも覚えていない絵本。
ただ、黒く塗りつぶされた画面の中に、獣の目だけが光っている。
そんな一枚の絵が、ずっと記憶のどこかに残っていたのです。
ああ、そうか。
あの絵を描いた人は、きっと森の中の本当の暗さを知っていたんだろうな。
そんなことを思いました。
真夜中の森と、白樺の木
そんな体験をした後だからでしょうか。
CALMA STOREのデザイナーが描き下ろした柄で作った生地を見たとき、思わず目が留まりました。
その名も「Midnight Birch(深夜的白樺)」。

黒を基調とした生地に、白樺の白い幹や枝が浮かび上がるように描かれています。
まるで、暗闇の森を切り取ったような柄。
九州は白樺が好む冷涼な気候の地域とは異なるため、白樺の森を目にすることは滅多にありません。
それでも、あの夜の黒さを思い出しました。
ところで、白樺という木について、どのくらい知っていますか?
私はあの白く美しい幹が印象的で、どこか繊細な木というイメージを持っていました。
でも、少し調べてみると、意外な一面があることを知りました。
白樺は、山火事や伐採などで開けた土地に、いち早く育つ木なのだそうです。
こうした木を「先駆樹種(パイオニアツリー)」と呼びます。
明るい場所を好み、ほかの木々に先駆けて成長することで、次の森が育つきっかけをつくることもあるのだとか。
あの白く美しい幹からは、ちょっと想像できない逞しさですよね。
しかも、あの独特な白さには「ベチュリン」という成分が関係しているそう。
樹皮に含まれるこの成分が、白樺らしい白い幹をつくっているんです。
そして、白樺の樹皮は昔から、人の暮らしの中でも使われてきました。
地域によっては、籠や容器などの材料として利用され、火を起こすための焚き付けにもなってきたそうです。
ただ美しいだけではなく、自然の中で生き抜く強さがあって、人の暮らしにも寄り添ってきた木。
そう知ってから、もう一度「Midnight Birch」の柄を眺めてみると、なんだか少し違って見えてきます。
岩を登る人が考えた、動きやすい服
そして、今回コラボレーションしているROKXにも、面白い物語があります。
ROKXを立ち上げたのは、マイク・グラハムさんという人物。

1970年代、アメリカのヨセミテを舞台に活躍したクライマー集団「STONEMASTERS」の一員だった人物です。
当時のクライマーたちは、軍の放出品だった白いセーラーパンツを穿き、長い髪をバンダナでまとめて岩を登っていたそう。
なんだか、自由で格好いいですよね。

でも、マイクさんがセーラーパンツから学んだのは、見た目の格好よさだけではありませんでした。
セーラーパンツといえば、裾が大きく広がったベルボトム。
実は、この形にも理由があったのだそうです。
海軍にいた叔父さんから、裾を縛ることでパンツの中に空気を含ませ、水に浮く助けになると教わったマイクさん。
そのとき初めて、洋服の形にはちゃんと機能があるのだと知ったそうです。
何気なく見ていた服の形にも、理由がある。
これって、なかなか面白い話ですよね。
ただ、そんなセーラーパンツも、岩を登るには決して動きやすいものではありませんでした。
そこでマイクさんは、自分たちが本当に動きやすいパンツを考え始めます。
最初に製品化したのは、白と黒のパンツ。
白は太陽の光を反射する夏用、黒は光を吸収する冬用。
伸縮性のないコットン生地でも、大きく脚を開けるように、股下には「ガセットクロッチ」と呼ばれるひし形のマチを設けました。
ちなみに、この構造は空手のパンツから応用したものなのだそう。
さらに、ウエストには片手で簡単に調節できるウェビングベルト。
裾は足元が見やすいよう、すっきりと絞った形に。
色にも、形にも、細かなつくりにも、ちゃんと「機能美」という理由があるんです。
ただ格好いい服を作るのではなく、実際に岩を登る人が、自分たちに必要な機能を考えて作る。
その発想から生まれたのが、マイクさんが1982年に立ち上げたGRAMICCIのクライミングパンツでした。
そして、GRAMICCIというブランドが大きく成長する中で、自分が作りたいものと、事業として求められるものとの間に違いを感じるようになります。
1999年にGRAMICCIを離れ、翌2000年に新たに立ち上げたブランドがROKXでした。
ROKXという名前は、「ROCK(岩)」と「EXTREME ACTIVITIES」を組み合わせた造語。
掲げたコンセプトは「EXTREME CASUAL」。
岩を登るための機能性を持ちながら、街でも自然に着られる服。
クライマーとしての経験と、日常の暮らしを結びつけたものづくりです。
こうして背景を知ると、普段何気なく着ている洋服の見え方も変わってきませんか?
一見すると何でもない形にも、誰かが考え抜いた理由がある。
実際に体験したからこそ、わかること。
そして、その経験があるからこそ生まれる表現や、ものづくり。
どこか通じるものを感じます。
知ることで、見え方が変わる
今回の「Midnight Birch」を使用する商品は、CALMA STOREとROKXによるコラボレーション。
ROKXが培ってきたアウトドアウェアの背景と、CALMA STOREらしい世界観が重なる一着です。

黒い生地に描かれた白樺の幹と枝は、自然の風景を思わせながら、どこか絵画のようにも見えます。
実は数年前、店主と好きなアウトドアショップの話をしていたとき、そこで扱われている商品の生地が話題になったことがあります。
白地に白樺の森が描かれた、どこか懐かしさを感じる柄。
その雰囲気がとても印象的で、CALMA STOREの世界観にも合うんじゃないかな、と思ったんです。
「いいね! 生地をあたってみよう」
すぐにそんな話になったものの、残念ながらその生地はすでに廃盤。
当時はそれ以上、話を進めることができませんでした。
でも、数年が経った今。
CALMA STORE自身がデザインから柄を描き起こし、生地を一から制作して、ひとつの商品にする。
あの頃にはできなかったことが、今はできるようになりました。
もちろん、自分たちだけの力ではありません。
デザインをする人、生地を作る人、服に仕立てる人、カルマストアの商品を手に取ってくれる人。
いろいろな人の手が幾重にも重なって、ようやく形になるもの。
We are flying barnacles.
「飛べないはずのフジツボが飛ぶ」
CALMA STOREが大切にしている言葉です。
自分たちだけではできなかったことも、誰かの力を借りながら、少しずつできるようになっていく。
今回の「Midnight Birch」は、そんなCALMA STOREの歩みを感じられる商品になりそうです。
白樺という木のことを知り、ROKXを生んだ人のことを知る。
そして、この柄が生まれるまでの話を知る。
そうしてもう一度眺めてみると、最初に見たときとは少し違って見える気がします。
同じものを見ていても、自分が何を経験してきたか、何を知っているかによって、見えるものが変わるんですね。
私たちは、道具や洋服を選ぶとき、色や形、使いやすさを考えます。
もちろん、それも大切。
でも、そこに自分だけの記憶や思い出が重なると、ものの価値はもう一歩変わる気がします。
「この人から買いたい」の、もうひとつ先を私たちは提案したい。
飛べないフジツボを空へ連れて行ってくれる。
そんな仲間たちを、これからはもっとフィーチャーしていきたいと思っています。

誰かにとっては、ただの白樺柄。
でも、ここまで読んでくださった方は、この柄がCALMA STOREのオリジナルで、数年前の小さな会話から始まったことを知ってくれています。
「へえ、そうなんだ」
それくらいのことかもしれません。
でも、知っているのと知らないのとでは、着て出かけた先で出会う景色も、少し違って見えるかも。
CALMA STOREが大切にしている「未来のアンティーク」という考え方も、そんなところにつながっている気がします。
すでにPOPUP等で少しずつお披露目していますが、12月初旬入荷予定です!
お楽しみに♡