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はじまりはセーラーパンツ。

はじまりはセーラーパンツ。

Posted on 11月 2, 2026


こんにちは、ゆやのです♪

先日、九重へ朝駆けに行ってきました。

朝駆けとは、まだ夜が明けないうちから山を登り、山頂や稜線で日の出を迎える登山のこと。

今回の出発は、真夜中の午前2時半。

台風が近づく前の空は厚い雲に覆われ、星さえも見えない夜でした。

ヘッドライトの明かりだけを頼りに、真っ暗な山道を歩いていきます。

そこで、ひとつ不思議なことに気がつきました。

星も見えないほど曇った空は、ぼんやりと青白く見えるのに、森の中はそれよりも驚くほど黒いんです。

同じ暗闇の中にいるはずなのに、木々が生い茂る場所だけは、光をすべて吸い込んでしまったかのような漆黒の世界。

そんな森の中を歩いていると、ふいに暗闇の向こうに光るものが見えました。

二つの目。

ヘッドライトの光を反射して、獣の目だけが闇夜に浮かんでいました。

ゾワゾワ、ザワザワ。

身体はちゃんと怖がっているのに、頭の中は意外なほど冷静で。

「あれはきっと鹿だろうな」

そんなことを考えながら、私はある絵本の挿絵を思い出していました。

いつ、どこで読んだのかも覚えていない絵本。

ただ、黒く塗りつぶされた画面の中に、獣の目だけが光っている。

そんな一枚の絵が、ずっと記憶のどこかに残っていたのです。

ああ、そうか。

あの絵を描いた人は、きっと森の中の本当の暗さを知っていたんだろうな。

そんなことを思いました。

真夜中の森と、白樺の木

そんな体験をした後だからでしょうか。

CALMA STOREのデザイナーが描き下ろした柄で作った生地を見たとき、思わず目が留まりました。

その名も「Midnight Birch(深夜的白樺)」。

黒を基調とした生地に、白樺の白い幹や枝が浮かび上がるように描かれています。

まるで、暗闇の森を切り取ったような柄。

九州は白樺が好む冷涼な気候の地域とは異なるため、白樺の森を目にすることは滅多にありません。

それでも、あの夜の黒さを思い出しました。

ところで、白樺という木について、どのくらい知っていますか?

私はあの白く美しい幹が印象的で、どこか繊細な木というイメージを持っていました。

でも、少し調べてみると、意外な一面があることを知りました。

白樺は、山火事や伐採などで開けた土地に、いち早く育つ木なのだそうです。

こうした木を「先駆樹種(パイオニアツリー)」と呼びます。

明るい場所を好み、ほかの木々に先駆けて成長することで、次の森が育つきっかけをつくることもあるのだとか。

あの白く美しい幹からは、ちょっと想像できない逞しさですよね。

しかも、あの独特な白さには「ベチュリン」という成分が関係しているそう。

樹皮に含まれるこの成分が、白樺らしい白い幹をつくっているんです。

そして、白樺の樹皮は昔から、人の暮らしの中でも使われてきました。

地域によっては、籠や容器などの材料として利用され、火を起こすための焚き付けにもなってきたそうです。

ただ美しいだけではなく、自然の中で生き抜く強さがあって、人の暮らしにも寄り添ってきた木。

そう知ってから、もう一度「Midnight Birch」の柄を眺めてみると、なんだか少し違って見えてきます。

岩を登る人が考えた、動きやすい服

そして、今回コラボレーションしているROKXにも、面白い物語があります。

ROKXを立ち上げたのは、マイク・グラハムさんという人物。

1970年代、アメリカのヨセミテを舞台に活躍したクライマー集団「STONEMASTERS」の一員だった人物です。

当時のクライマーたちは、軍の放出品だった白いセーラーパンツを穿き、長い髪をバンダナでまとめて岩を登っていたそう。

なんだか、自由で格好いいですよね。

でも、マイクさんがセーラーパンツから学んだのは、見た目の格好よさだけではありませんでした。

セーラーパンツといえば、裾が大きく広がったベルボトム。

実は、この形にも理由があったのだそうです。

海軍にいた叔父さんから、裾を縛ることでパンツの中に空気を含ませ、水に浮く助けになると教わったマイクさん。

そのとき初めて、洋服の形にはちゃんと機能があるのだと知ったそうです。

何気なく見ていた服の形にも、理由がある。

これって、なかなか面白い話ですよね。

ただ、そんなセーラーパンツも、岩を登るには決して動きやすいものではありませんでした。

そこでマイクさんは、自分たちが本当に動きやすいパンツを考え始めます。

最初に製品化したのは、白と黒のパンツ。

白は太陽の光を反射する夏用、黒は光を吸収する冬用。

伸縮性のないコットン生地でも、大きく脚を開けるように、股下には「ガセットクロッチ」と呼ばれるひし形のマチを設けました。

ちなみに、この構造は空手のパンツから応用したものなのだそう。

さらに、ウエストには片手で簡単に調節できるウェビングベルト。

裾は足元が見やすいよう、すっきりと絞った形に。

色にも、形にも、細かなつくりにも、ちゃんと「機能美」という理由があるんです。

ただ格好いい服を作るのではなく、実際に岩を登る人が、自分たちに必要な機能を考えて作る。

その発想から生まれたのが、マイクさんが1982年に立ち上げたGRAMICCIのクライミングパンツでした。

そして、GRAMICCIというブランドが大きく成長する中で、自分が作りたいものと、事業として求められるものとの間に違いを感じるようになります。

1999年にGRAMICCIを離れ、翌2000年に新たに立ち上げたブランドがROKXでした。

ROKXという名前は、「ROCK(岩)」と「EXTREME ACTIVITIES」を組み合わせた造語。

掲げたコンセプトは「EXTREME CASUAL」。

岩を登るための機能性を持ちながら、街でも自然に着られる服。

クライマーとしての経験と、日常の暮らしを結びつけたものづくりです。

こうして背景を知ると、普段何気なく着ている洋服の見え方も変わってきませんか?

一見すると何でもない形にも、誰かが考え抜いた理由がある。

実際に体験したからこそ、わかること。

そして、その経験があるからこそ生まれる表現や、ものづくり。

どこか通じるものを感じます。

知ることで、見え方が変わる

今回の「Midnight Birch」を使用する商品は、CALMA STOREとROKXによるコラボレーション。

ROKXが培ってきたアウトドアウェアの背景と、CALMA STOREらしい世界観が重なる一着です。

黒い生地に描かれた白樺の幹と枝は、自然の風景を思わせながら、どこか絵画のようにも見えます。

実は数年前、店主と好きなアウトドアショップの話をしていたとき、そこで扱われている商品の生地が話題になったことがあります。

白地に白樺の森が描かれた、どこか懐かしさを感じる柄。

その雰囲気がとても印象的で、CALMA STOREの世界観にも合うんじゃないかな、と思ったんです。

「いいね! 生地をあたってみよう」

すぐにそんな話になったものの、残念ながらその生地はすでに廃盤。

当時はそれ以上、話を進めることができませんでした。

でも、数年が経った今。

CALMA STORE自身がデザインから柄を描き起こし、生地を一から制作して、ひとつの商品にする。

あの頃にはできなかったことが、今はできるようになりました。

もちろん、自分たちだけの力ではありません。

デザインをする人、生地を作る人、服に仕立てる人、カルマストアの商品を手に取ってくれる人。

いろいろな人の手が幾重にも重なって、ようやく形になるもの。

We are flying barnacles.

「飛べないはずのフジツボが飛ぶ」

CALMA STOREが大切にしている言葉です。

自分たちだけではできなかったことも、誰かの力を借りながら、少しずつできるようになっていく。

今回の「Midnight Birch」は、そんなCALMA STOREの歩みを感じられる商品になりそうです。

白樺という木のことを知り、ROKXを生んだ人のことを知る。

そして、この柄が生まれるまでの話を知る。

そうしてもう一度眺めてみると、最初に見たときとは少し違って見える気がします。

同じものを見ていても、自分が何を経験してきたか、何を知っているかによって、見えるものが変わるんですね。

私たちは、道具や洋服を選ぶとき、色や形、使いやすさを考えます。

もちろん、それも大切。

でも、そこに自分だけの記憶や思い出が重なると、ものの価値はもう一歩変わる気がします。

「この人から買いたい」の、もうひとつ先を私たちは提案したい。

飛べないフジツボを空へ連れて行ってくれる。

そんな仲間たちを、これからはもっとフィーチャーしていきたいと思っています。

誰かにとっては、ただの白樺柄。

でも、ここまで読んでくださった方は、この柄がCALMA STOREのオリジナルで、数年前の小さな会話から始まったことを知ってくれています。

「へえ、そうなんだ」

それくらいのことかもしれません。

でも、知っているのと知らないのとでは、着て出かけた先で出会う景色も、少し違って見えるかも。

CALMA STOREが大切にしている「未来のアンティーク」という考え方も、そんなところにつながっている気がします。

すでにPOPUP等で少しずつお披露目していますが、12月初旬入荷予定です!

お楽しみに♡

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